東日本大震災。そのいち。

被災してる間に書き溜めたものです。
私は本当に軽い被災だったけれど参考までにどうぞ。

人間は冷たい。
性悪説を全く信じていなかったけれどこういう時って本性が出るから。
もう疑う事も無い。
冷酷だ。
地震が来た時には家に一人。
授業料免除の申請書類を書いていた時、ものすごい音がして間もなく揺れが。
音が尋常ではなかったから即屋外に出れば。
家が、軋んでいた。
プリン揺らしてるみたいな、二階が転げ落ちそうな揺れ。
ガラスが悲鳴をあげる。
壁は割れた。
私は一人、目を見開くばかりだった。
すぐに大津波警報が鳴り響く。
予想される津波は3m、6m、10mに変わり警告される。
警告……?
高台までどう行ったらいいの。
避難所までには一旦川沿いの道に出なければならない。
そこで流されたら?
…ここに留まろう。
10m…もし来たら死ぬな。
携帯が鳴った。
携帯いじりながらの作業だったから、あたし、持って出たみたい。
お父さんだ。
「大丈夫かー?」
…なんて間抜けな声。
お母さんから電話が来るかも、と電話を切る。
留守電が入っていた。
お母さん。
留守電を聞こうとすれば繋がらない。
はっとして画面を覗けば、圏外表示。
どうしよう。
もうだめだ。
お父さん、迎えに来て。
早く。
早く。
分厚いコートと貴重品を身につけてお父さんを待つ。
家族がバラバラだ……
周りに住んでいる人たちは車で逃げ始める。
一台…また一台…
佇んでいるあたしを一瞥して通り過ぎるのは話したことが無い人で。
顔見知りはあたしに話しかけられないように、と存在に気付いているのに通り過ぎていく。
乗せて、そう言えば乗せてくれた?
…答えは分かってる。
また、携帯が鳴る。
繋がった…!
「お父さん!?今どこらへん!?」
「は?会社」
「は!?」
「今仕事だから迎え行けないよ」
はあ……?
あたしが親なら迎えに行くよ。
家に子どもが一人なんだよ。
車で10分も掛からない所で働いてるじゃない。
どうでもいいの?
この話をお母さんにしたら、お母さんは「仕事クビになってもいいから迎えに行きます、って言うな」って言ってくれた。
「仕事できる状況じゃないんだから迎えに来て、早く」
涙堪えた。
高台に避難して日没近くに帰宅。
家の中で壊れているものと言えば壁くらいなもので、例えば皿が割れたりなどが無かったのが喜ぶべきことであって。
明るいうちに懐中電灯をかき集めておく。
水道が出る。
溜める?って聞いたらいらないって言うんだもの、溜めなかったら次使う時にはもう断水していた。
自分がすべきと思ったら人の意見なんか聞かなきゃよかったよ。
あるだけの食料集めていたら炊飯器の中で予約炊飯を待っていたお米を発見。
土鍋に移して電気いらないストーブで炊く。
豪勢だねって笑いながら。
湯気が焦げ臭くなったら出来上がり。
カロリーメイトアクエリアスはたくさんあるから最悪、どうにか生き延びられるだろうと。
机の下で眠る。
怖くてしょうがないから。
家が崩れ落ちませんように。
お母さん、生きていてね。
弟はきっと学校がどうにかしてくれるだろうから。
ただ、寒いしひもじかろう。
コートとかも持っていかなかったから寒いだろうな。
すぐ逃げられるように何重にも服を着て布団被って眠る。
…余震と不安で寝れなかったけどね。

3/12。
朝が、来た。
明るいってそれだけで安心する。
何かしていないと嫌で、起きてすぐに目玉焼きを二つ焼く。
どちらの黄身も割れてしまったのは私の動揺を表現するには十分。
冷蔵庫が機能しなくなって腐敗が始まるからって、豚コマを焼く。
味つけを忘れるなんて普段の自分じゃ考えられない。
いつか見た、お皿にラップを敷いてその上にご飯だのおかずだの置いて洗い物減らすっていうのを実践する。
ガスが使えることが判明してご飯を蒸かし釜であっためなおす。
ヘリで給水の案内があった。
給水でも割り込みと心無い言葉に傷付く。
あたしは本当に人と交わっていきたいと思ってるんだろうか(´・ω・`)
残りの家族を迎えに行く。
生きていてくれて良かった。
車も無事(`・ω・´)
母方の家族の無事確認。
家屋は全壊。
てゆかどこに行ったかすら分からないって。
未曾有の、震災。
東日本大震災だってさ。
そんな名前つける暇あるなら助けろよ。
そう毒付くうちは大丈夫なんだろうな。
隣の集落は全滅。
帰ってみたら家が無かったよ、そう笑って避難所に戻る生徒がいたそうだ。
テーブルの裏を見つめて思う。
寂しい。

3/13。
父方の祖父の無事確認。
漁に行くところだったらしいから心配していました。
市内の一部には電気がきたらしい。
水道からぬるぬるする薄茶色の水が出る。
が、止まる。
ご飯3合炊く。
お母さんの弟がまた来た。
ご飯を振る舞ってぬるぬるの水風呂に入っていく。
彼は自分の住んでいた周辺のムービーを見せてくれた。
家があったはずの所にはドブだらけのガラクタ。
死の匂い。
終戦後、世界史の資料集で見たそれを彷彿とさせる。
歩けば釘が足に刺さるガラクタだらけの更地と所々の火災。
これに加え死体の山だったそうだ。
盗みが横行する市街地。
大抵が塩水に浸かりドブを被っているから商品にはなり得ないのだけれど。
狂う避難者。
当たり前。
避難所を出れば破滅した生活の跡を見るだけ。
残っているのは鉄筋コンクリートの建物だけ。
気象庁の発表は4m。
実際のところ、10mはあったそうだ。
亡くなられた方も多い。
マグニチュードが8.8から9.0に変更される。
史上最大級。
さあ、助けてくれ。
少なくともここよりもっと被害のあるところ、そしてなにより物資が少なくなっているところを。
テーブルの下の寝床は弟に譲る。
冷蔵庫は腐敗臭。
はやく電気通るといいな。

3/14。
消防に行って電話を借りて大学に連絡する。
郵便局が津波に遭って、提出書類が紛失したこと。
入学式までに大学にいけないかもしれないこと。
それ以前に入学できるのかということ。
気ばかり早って半泣きで受話器にしがみつく。
周りより良いところの大学に入れたからって浮かれてたら入学できないなんて洒落にならない。
入学は大丈夫らしい。
一安心。
食料調達。
米もパンもどこにも売ってない。
牛乳も卵も何にもない。
日持ちしそうなものだけ買っていく。
冷蔵庫も動いてないからね。
中には海産物を無料で配布してくれる方もいて。
「これ食べて元気だして」その言葉に胸を打たれる。
この日は家族、一人一尾のサンマを食べられた。
美味しかったよ。
ありがとう。
病院に行って授業料免除に関する書類貰おうとしたら担当者いなくて見つからない(´・ω・`)
無駄足。
母方の祖母の姉妹さんの家にお邪魔して携帯充電してもらう。
水道水をペットボトルに汲んで貰う。
目の前に出されたあったかいお茶に幸せだなあって思う。
羨ましかったなあ。
お菓子出されて、全部食べてしまった。
すごくお腹空いていたんだもの。
図々しくお風呂までいただいて。
シャンプーが一回じゃ泡立たなくてね。
この日はさっぱり。
髪が「あめて」いたのがふわふわに戻った(`・ω・´)
家に戻る山道で、うちより山側の家には電気が来ていることを確認。
わくわくしてブレーカーあげてもうちには電気きてなかった(´・ω・`)
今日も暗い部屋で眠ります。
ラジオ聴いてて、東京FM聴いてて、誰かあたしのこと言ってくれないかなって期待して実際誰もあたしのこと考えてくれてる人なんかいるわけなくて悲しくなって寝落ちる、それだけで感情が揺れ動く。
ああ、生きているんだ。
明日も生きてやる。
そう思える。
だからいいの。
先生に教わったんだ。
強がれるのも強さのうちなんだって。
あたしは強い子。

3/15。
誕生日おめでと。
今日はとっても冷え込む。
最低-1℃、最高5℃だったかな。
さむーい。。。
生理二日目。
ご機嫌斜め・食欲旺盛。
新聞が来る。
ああ、ここら辺は元の生活を取り戻しつつあるな。
ペヤングソース焼きそばを初めて食べる。
美味しいw
二階のあたしの部屋の片付け…っていうか新生活に必要な物の仕分け。
夕方になって電気が付くこと判明!
暖房即点ける!
炊飯器でご飯っ!
冷蔵庫が動き始める…!(´;ω;`)
電話回線とかダメだからネットはできないの。
ADSLだからね。
水道もちょろちょろだけど綺麗なのが出たみたい。
あったかいなあ。
おやすみなさい。

3/16。
お母さん、誕生日おめでとう。何もプレゼント無くてごめんね。
久々に見たのは甘ったるい夢だった。
ごめん。
水道が止まりました。
またかよ…(´・ω・`)
静岡で震度6だって。
雪の街でガソリンスタンドに並ぶ人たち。
それにしてもここ毎日鼻水が止まらない。
風邪かな…。
さあさあ。
喧嘩が始まる頃ですよっと。
そろそろ電話どうにかならないのかな。
最寄りの電話って車で30分は掛かる。
ガソリンが無いから行けない。
大学に、「3日後にまた連絡して下さい」って言われたんだけど無理です。